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起業家トークセッション<第4回>

「Silicon Valley Player ―シリコンバレーが5年間で教えてくれたこと」
(2004年6月3日)

スピーカー: 
IP Infusion co-Founder & VP 
吉川 欣也氏(写真左) 
IP Infusion co-Founder & CTO 
石黒 邦宏氏(写真右)
photo:スピーカー 吉川 欣也氏と石黒 邦宏氏

 「野球をやるならメジャーリーグ、サッカーならセリエA、起業するならシリコンバレー。世界最高の舞台でプレイしてこそ分かること、それを掴みたかった」SVJEN第4回起業家トークセッションは、自らを「シリコンバレー・プレイヤー」と称するIP Infusion共同創業者のお二人をスピーカーにお迎えした。セッション冒頭の、SVJENプレジデント外村氏によるスピーカー並びにゲスト紹介では、笑いあり、感動あり、大物ゲストに対するどよめきありと、共同創業者二人が揃う初めての講演に対する期待を更に盛り上げた。140人を超える大聴衆の中には、愛弟子の晴れの舞台に駆け付けたIP Infusion創業以来のメンター・藤村道雄氏や、前回起業家トークのスピーカーでもある渡辺誠一郎氏、来米中の日本人ベンチャー・キャピタリスト村口和孝氏の姿もあった。若きシリコンバレー・プレイヤー二人を見守る彼らの温かい眼差しは、起業家を育むシリコンバレーの精神そのものであった。

◆シリコンバレーへの「憧れ」から全ては始まった◆

 吉川氏の「プレイヤー人生」の第一歩は、学生時代に読んだ「シリコンバレー・フィーバー」だった。この本でベンチャー・キャピタリストという職業を知った吉川氏は、当時新卒を採用していた数社のVCの一つに入社する。しかし、吉川氏の目標はあくまで「自分の会社を作ること」。仕事上出会った多くの社長達の「若さは武器」という言葉に背中を押され、新卒で入社したVCを半年で退職。その後勤務したマルチメディア関連を得意とするシンクタンクで、彼が初めて目の当たりにした「シリコンバレー企業のCEO」は、Intelのアンディ・グローブだった。グローブの圧倒的な存在感と妥協を許さない仕事振りは、吉川氏に非常に強い印象を残した。

◆共同創業者二人の出会い◆

 一方の石黒氏は、北海道の山奥で白樺の樹液採取・販売に明け暮れる学生時代を過ごした。「林業は将来がない、と教授に言われた」「僕は(シリコンバレーへは)吉川に連れて来られただけ」と、独特の飄々とした口調で会場の笑いを取りながら、あくまで、「絶対的な自信を持っていた」プログラミングを続ける環境を第一に考え続けたと言う。石黒氏は、ISPで働いていた当時、シスコのルーターに触れた時「これなら自分でも作れる」と直感。周りが「絶対無理だ」と言う中、持ち前の反逆精神でコツコツと書き始めたプログラムは5万行にも達し、今日のIP Infusionの技術の核となった。最初の会社を興していた吉川氏と出会ったのは、そのプログラムを書きはじめた頃。駅までのたった5分の道程が、IP Infusion共同創業者二人の運命の出会いだったそうだ。

◆「憧れ」を「現実」に変える過程◆

「会社はサークル活動じゃない」
「君は、会社がやりたいのか、それとも社長になりたいのか」
聴衆にも大きな感銘を残したメンター藤村氏の言葉の数々や、ライバルであるはずのシスコシステムズのエグゼクティブから、吉川氏はシリコンバレーでのゲームのルールを学んで行ったと言う。成功体験者の懐の深さに感謝しながらも、明日への闘志を燃やした日々の中で得た教訓は、「『仕組みの軽視』や、『取りあえず』的発想は非常に危険だ」ということ。どんなに良い製品を持っていても、法律的にグレーな部分があったら成功は覚束ない。会社設立の頃から、弁護士や会計士等の費用はケチらず、正規の手続きに則った経営を行うこと、これが吉川氏からのアドバイスであった。

◆日米で異なる製品開発手法とマネジメントスタイル◆

 日米でソフトウェア開発を経験し、現在CTOの地位に就く石黒氏からは、製品開発における発想の違い、それからエンジニアのマネジメントについてのコメントがあった。ドキュメンテーションや品質に対するこだわりが強い日本企業に対して、アメリカ企業では、殆どドキュメントは作らず、テスト(試験)を重視する。テストが開発の一部と考えられている日本企業に対して、テスト専門のエンジニアが割り当てられ、その人数も日本企業に比べると段違いに多い。「出荷時の品質は必要最低限で少しでも早く製品を市場に出す」傾向が強いのは、投資に対するスピーディなリターンが重視されるアメリカ企業の経営を反映しているとも言える。また、エンジニアをマネジメントする上での苦労にまつわる石黒氏の体験談―腕に自信のあるエンジニアほど、自分より優れた技術力を持つ上司でなければ言うことを聞かない。しかし、一対一での勝負を挑み「自分はお前より上だ」と一人一人威嚇して回る、言わば「ボスザル方式」のマネジメントが通用するのは部下が20人程度までの場合しか使えない―には、多くの参加者が頷いていたことから、洋の東西を問わない苦労と言えそうだ。加えて、石黒氏からは、マネジメントに関して日本企業と大きく異なる点は、「ボスの意思決定は絶対服従」徹底したトップダウンにある、という指摘もあった。

◆成功の秘訣、そしてIP Infusion最大の危機とは◆
  • ビジョンを明確に
  • 製品デモは必須
  • 見せる相手や状況に合わせた事業計画書
  • ビジネス社会の、そしてシリコンバレーの常識を弁える
  • 自信を持つ

過去5年間で最大の危機は、やはり資金繰り。「ここで資金が集められなかったら来月の給料が払えない」という危機的状況と、それをいかに乗り越えたかについて吉川氏が言及した時は、多くの聴衆が生々しい体験談に固唾を呑み、活発な質疑も行われた。しかし、最大の危機に瀕しても、「確かに、あそこで(資金が)出て来なかったら厳しかったが、絶体絶命だとは思っていなかった」と振り返り、「リスクは取らない」と断言する吉川氏の冷静な舵取りと、吉川氏の手腕に全幅の信頼を置く石黒氏との信頼関係、ここにIP Infusionの強さがあるのではないだろうか。

 講演後の懇親会でも、スピーカーの二人や豪華ゲストを取り囲む人の波は終盤まで途切れることがなく、大変な盛り上がりを見せた。夜10時過ぎまで語り合った参加者の表情は、一様に熱に浮かされたようだったのが印象的であった。

 「なぜシリコンバレーなのか」「なぜ起業したいのか」IP Infusionのビジョンは、創業から5年を経た今も、全く色褪せず、創業者二人の言葉に生きている。夢を熱く燃やしながらも、成功確率を少しでも高める道を見定め続けるクールな眼差し。ライバル・シスコシステムズの背中を虎視眈々と狙い続ける二人のサクセス・ストーリーは、彼らの後に続かんとするシリコンバレー・プレイヤー達に勇気を与え続けてくれるに違いない。

 
(文:芦野朋未)

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▲講演後もスピーカーの二人に熱心に質問をぶつける人々が列をなした ▲明日のシリコンバレー・プレイヤーたらんとする大聴衆の熱気に包まれたWSGR大会議室


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2003 Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network